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地球上からタネが消える?
豊かな食文化を守るためにできること

食べ物の種
(c)Collective Eye Films

おうち時間を充実させる趣味として、家庭菜園やガーデニング熱が高まっています。そんな身近なタネですが、“タネの94%が20世紀に消滅した”と聞いたら、皆さんはどう思いますか? 信じがたいことに、日本でも次々とタネが失われているのが現状です。タネが直面している危機を知り、豊かな未来を守るため、いま私たちに何ができるのか考えてみました。

野菜のタネは絶滅危惧種?

私たちが普段食べている作物、米・野菜・果物などは、すべてタネからできています。人間はタネなくしては生きていけません。そんなタネの94%が20世紀に消滅したと聞いたら、皆さんはどう思うでしょうか? おそらく大多数の人が、「そんなわけない! タネなんてホームセンターにも農家にもたくさんあるじゃないか」と答えるでしょう。ところがこれは、本当の話なのです。ドキュメンタリー映画『シード~生命の糧~』では、20世紀の間に、野菜のタネの94パーセントが失われてしまったという衝撃的な事実を伝えています。しかも、人間の手によって。544品種あったキャベツは28品種に、アスパラガスにいたっては46品種あったものが1品種になってしまったというのです。なぜこのようなことが起こってしまったのでしょうか?

タネが採れる野菜と、採れない野菜がある

原因を探る前に、まずはタネの種類についてみていきましょう。一口にタネと言っても、野菜となると他の植物とは話が異なります。なぜなら、そこには人間の意思が加わるからです。美味しくて収穫量の多いものがいい、形がよくて耐病性のあるものがいいなど、野菜のタネの歴史は、まさに品種改良の歴史。タネが消えた理由もそこにありそうです。

多様性に飛んだ“固定種”

図解

タネが採れる、つまり自家採種できるのが“固定種”と呼ばれる方法です。いわゆる昔からある普通の野菜のタネのこと。タネを播いて野菜を収穫すると、同じ品種でも性質にバラつきがでます。その中から欲しい性質をもつ株を選んでタネを採り、翌年そのタネを播いて育てて、またその中から目的の株を選んでタネを採る、ということを何代も繰り返すのです。そうすることで性質のぶれが少なくなり、親と同じ性質をもった野菜ができるようになります。

安定供給に向く“F1種”

図解

タネが採れない、正確には自家採種では同じ性質をもったタネが採れないのが、“F1種”と呼ばれる方法です。普段スーパーで見かける野菜の9 割はこの種類。雑種第一代やハイブリッドとも呼ばれ、異なる性質をもつ品種を人工的に掛け合わせて作ります。例えば、“甘いが病気に弱いトマト”と、“甘くないが病気に強いトマト”を掛け合わせると、“甘くて病気に強いトマト”ができるというわけです。これは、一代目には親の優性な特徴だけが現れるという、メンデルの法則にのっとったもの。ただし、それができるのは第一世代だけ。そこからタネを採って育てた二代目は、親の劣性の特徴も出てしまい、性質や見た目もバラバラになってしまうのです。つまり、F1種を栽培するためには、種苗メーカーから毎年新しいタネを買い続けなければなりません。

それぞれのメリットとデメリットをまとめると、以下のとおり。

固定種

【メリット】

  • タネが採れる(自家採種できる)
  • 環境適応能力が高い(その土地の風土にあっている)
  • 地域ごとに個性豊かな野菜が作れる(伝統野菜など)
  • 野菜本来の味が楽しめる

【デメリット】

  • 同じ品種でも収穫時期や品質にバラつきがある

F1種

【メリット】

  • 収穫時期も見た目も均一化される(出荷に有利)
  • 生育が早く、収穫量も多い(雑種強勢)
  • 特定の病気に耐病性をつけやすい
  • 苦味や香りの少ない、一般受けする野菜が作れる

【デメリット】

  • 毎年タネを買う必要がある(実質的に自家採種できない)

なぜタネの多様性と自由は失われたのか

それぞれの特性から、タネが消えゆく原因について考えてみましょう。まずひとつに、日本の農業が抱える問題があげられます。農業従事者が減少の一途をたどる現状では、国民1億2000万人の食料をまかなおうとすると、大量生産大量販売にむくF1種でないと需要に応えられません。形が不揃いで収穫時期もバラバラな固定種では、市場のニーズに応えられなくなってしまったのです。特定のF1種のタネを買い続けるうち、自家採種で受け継がれてきた多様な固定種は、次第に数を減らしていったと考えられます。

さらに世界に目を向けると、グローバル企業によるタネの独占も問題視されています。「そんなことが可能なの?」と思われるでしょうが、前述の『シード~生命の糧~』によると、世界の種子市場の3分の2が、主要な種子会社によって寡占状態になっているというから驚きです。特許による所有権が発生したタネは自家採種が許されないため、企業からタネを購入せざるをえません。農家は自分で育てた作物からタネを採ることができなくなってしまったのです。グローバル経済に支配され、タネの自由が失われていく現実が描かれています。

他人事ではなく、日本でもこれに近いことが起こりつつあります。2020年の種苗法の改正により、登録された品種に限り、自家増殖(自家採種含む)が原則禁止となりました。これは、ブランド品種の海外流出を防ぐという「種苗の知的財産権」を守るためでもありますが、同時に農家の「自家増殖の権利」が制限され、タネの多様性が失われるとして議論を呼んでいます。

タネは今や一大農業ビジネスとなってしまいました。タネが農家の手を離れ、品種の選別がすすんだことが、タネの多様性と自由が失われた原因だったのです。

伝統野菜を守ろう! 世界中で広がる活動の輪

笑う人々
(c)Collective Eye Films

日本をはじめ世界には、各地域で受け継がれてきた固定種がたくさんあります。そのタネを失うということは、食文化までも失うこと。また、品種が限定されると、気候変動や病気の蔓延で全滅する危険性もあるのです。食糧難が懸念されるいま、遺伝的多様性を残すためにも、タネを守ることが求められています。

タネが失われる危機感から、さまざまな取り組みがもうすでに始まっています。その最たるものがノルウェーにある種子銀行「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」です。現代版ノアの箱舟とも称され、世界中から送られてくる植物の種子が100万種以上も保存されているのです。市民や個人レベルでも、伝統野菜のタネ収集や保管などを行う活動が広がっています。アメージングカレッジとしてぜひ紹介したいのが、小林 宙さんです。伝統野菜を守るため、なんと15歳でタネの会社を起業したつわものです。彼の懸命な活動は、ぜひ著書『タネの未来:僕が15歳でタネの会社を起業したわけ』(家の光協会/2019年)をご覧ください。タネの置かれた現状を学ぶ教科書としてもおすすめです。

固定種の野菜を育てること、農家さんから固定種の野菜を買って食べることも、タネの多様性を守ることに繋がります。私たちアメージングカレッジも、豊かな食文化を未来へ残す一助を担いたいと思っています。


参考文献

小林 宙, 2019,『タネの未来:僕が15歳でタネの会社を起業したわけ』,家の光協会

野口 勲, 2011,『タネが危ない』,日経BP 日本経済新聞出版

タガート・シーゲル、ジョン・ベッツ,2016アメリカ,『シード~生命の糧~』, ユナイテッドピープル

食べチョク,2018.07.30,『野菜の固定種・在来種とは?F1種との違いと守り続けるべき理 由』,https://andmore.tabechoku.com/seeds/

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